エリザベート1848『手紙』エリザベート1848『手紙』 親愛なるジェラール、 そちらは寒くはなくって?元気にしていらっしゃる? サシャはお腹をこわしていなくって? ロシアでのマクシミリアンサーカス団の評判、とってもいいみたいね。 お父さまのお墨付きならどこでも行けるってことだけれど、 きっとあなたのファントム・レビューの力が大きいのだと思います。 私はあれから、あなたが見せてくれた、あの幻想を何度も夢にみています。 白いドレスを着て、腰まで伸ばした髪を結ってたたずんでいたり、 大聴衆の前で何か歌っていたり、王冠を戴いていたり。 かと思うと、いろいろな場所を旅していたりして、このあたりはあなたと同じね。 行ったこともない場所を見られるのはとっても愉しいけれど、私はなぜかいつも一人なの。 お父さまもグスタフも、それぞれ違う幻想をみたようだけれど、とても深い感銘を受けたって お互いに話しているわ。 さて、あなたの希望、早速かなったことよ。 パリもいまは混乱中なので、かえってクレア嬢はこちらを訪ねやすかったんですって。 いま彼女は、私たちの城に滞在しています。 とっても真面目だけど、素敵な雰囲気を持った人ね。 グスタフのヴァイオリンに合わせて、いくつかステップを披露してくれたわ。 クレア嬢もグスタフも静かな人たちだから、気が合ったみたいで、二人でよく芸術の話をしています。 そうそう、彼女もあなたのレビューを見たんですって? 詳しくは話してくれないけれど、きっと素敵なものだったでしょうね。 お父さまはオペラ座のダンサーならきっとマクシミリアンサーカス団にも華を添えてくれるって、喜んでいらしたし、 彼女の希望通り、ロシアのバレエ師範のコースにも入れるよう、手配も済みました。 クレア嬢の旅券が調い次第、オーストリア経由でロシアに向かってもらいますからご安心を。 彼女が着いたら、きちんとお迎えに行ってね、いいこと? ジェラールがいなくなってから、ルイーズ夫人の宿題がまた難しくなったの。 妖精の国の女王にも教養が必要だってあなたが言ったから、好きなものは少し真面目に取組んでいるけれど。 女王にふさわしい美貌の方は、教えてもらった魔法のハンガリアン水の処方、 きちんと守って使っているから、大丈夫ね。 困ったらいつでも駆けつけてくれるって約束、忘れないで。 ではまた、今度は4人でお会いしましょう。 いつまでもあなたの友達 エリザベート |